杜琪峯的風格~『エグザイル/絆』
エグザイル/絆(原題:放、逐) 2008年・香港
監督:杜琪峯(ジョニー・トー)
出演:黄秋生(アンソニー・ウォン)、呉鎮宇(ン・ジャンユー)、林雪(ラム・シュ)
張耀揚(ロイ・チョン)、張家輝(ニック・チョン)、何超儀(ジョシー・ホー)
ボスを襲い追われるウー(阿和)は、妻と生まれたばかりの子どもと過ごすためにマカオに戻ってきた。彼の始末を命じられたブレイズ(火)とファット(阿肥)、ウーを守ろうとするタイ(泰)と、キャット(猫)が、ウーの元に集まる。
かつて幼なじみであった5人の再会がもたらすものは……。
台詞を極端に省いて、感情の表出をぐっと抑えこんでいるのに、物語は驚くほどすんなりと入ってくる展開。一人一人の立ち位置まで計算された、画面構成。杜琪峯(ジョニー・トー)監督が、自身のスタイルを究めに極めた作品といっても過言ではないくらいに、作りこまれている作品。
香港映画でありながら、世界のどこで作られたと言われてもうなずいてしまいそうな広がりがあることに、まずひと唸り。
中華圏映画につきものの、漢字もほとんど登場しない。
マカオが舞台だからか、どこかヨーロッパを思わせる路地裏と街の景色。
そしてなにより驚いたのが、荒野とでもいうような風景が現れ、画面を一瞬のうちにロードムービー風に切り替えてしまったこと。オーストラリアの荒野や、アイルランドの荒れ地、アメリカ西部の岩地のように見せてしまう。しかし、その先にあるものは巨大な観音像。また、一瞬のうちにマカオという中華圏に引き戻される。この時間や場所をも一瞬のうちに飛び越えてしまうような、不思議な感覚にとらわれる。
そして、杜琪峯作品の常連の面々が、いつもながらに男くさく、かっこいいのはいうまでもない。裏社会の住人であるはずの彼らに、悲壮感や義侠心は似合わない。どこか、スタイリッシュで軽妙ですらある。
そして登場する女性二人のうちの一人、ウーの妻。男くさい連中の中で、彼女は銃をかまえて男どもと渡り合い、生まれたばかりの我が子を抱いたまま敵陣に乗り込む、気の強さと度胸を備えている。その強さは、組織の掟や、義侠心なんかではなく、夫を思い、子を思う私情からわき出たものだけに、彼女の存在は向こう側にいる男たちと、こちら側の観客たる自分をつなぐ現実的なものに思える。それだけに、無性に彼女が印象に残る。
中国語で様式やスタイルを現す言葉は“風格”。
さまざまな流れ方をする時間と、香港から飛び出して無国籍に見え始める空間の中で、まさに杜琪峯の“風格”に酔い、浸る作品。
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